楽器を演奏することは、歌うことと同じである
超絶ハイトーンとかジャズの即興とかが目立つので、意外と要られていませんが、セルジオの根底にあるのはかなりオーソドックスな考え方です。
A.ジェイコブスをはじめとした、その他影響を受けた膨大な数のブラスプレイヤーが口を揃えて言う
「歌って、バズイングして、吹く!」
「楽器を演奏することは、歌うことと同じである」
について掘り下げていきます。
チューバサダーズでも何度も話題にしているので、前回の哲学的な話ではわかりにくかった方もこの話題は理解しやすいのかと思います!
それではいってみましょう!
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歌うこと
チューニングが正しくできるかどうかは、良い耳を持っているかどうかにかかっています。耳が敏感であり、楽器のコントロール能力が十分に上達していれば、正しい音程を保つことができ、生涯にわたってあなたの音楽に正確な音程感を与えてくれます。
アンサンブルにおいては、通常、最も高い声部に音程を合わせます。これにより、チューバなどの低音楽器は、特に繊細な調整が求められます。音程感は、音の美しさと同様に、一生を通じて研究し続けるべき要素のひとつです。
チューニングを向上させるためのポイント
- 耳を鍛える:正しい音程を聞き分けることができるようにする。
- 柔軟性を持つ:演奏する環境や編成に応じて、音程を微調整する。
- 呼吸と発音を安定させる:安定した息の流れが、正確な音程につながる。
- 楽器の響きを最大限に活かす:共鳴を意識し、音が自然に響くようにする。
- 他の楽器とのバランスを意識する:アンサンブルでは、他の奏者の音をよく聞きながら調整する。
視唱(Sight Singing)の重要性
楽器を演奏する前に、音を正しくイメージし、歌うことができることが重要です。異なるポジションや指使いで同じ音を出せる金管楽器では、特にこの能力が重要となります。視唱を日常的に取り入れ、ピアノなどの鍵盤楽器を活用しながら、正確な音程感覚を身につけましょう。
「音楽とは、空気と振動による歌である。楽器を演奏する際も、まずは歌うように感じることが大切だ。」
– セルジオ・カロリーノ(ポルト、2018年1月21日 20:00)
音程を良くしたい。どうしたらいいですか?
こんな質問をよく受けますが、正確な音程を歌得るようになることが、正確な音程で演奏するに繋がります
つまり、あなたが取り組んでいる曲のメロディを仮に全然歌えなかったら、何度機械的な練習を楽器で繰り返しても、上達はしないということです。
楽器の音程を作るのはバルブでもキーでもなく、演奏者本人の耳と頭の中の音程です。
実際のレッスンでもセルジオは楽器演奏の本質は 「歌うこと」 にあると強く語っています。「楽器は自分の声を拡張するもの」 であり、ただの自動的に音を作ってくれる装置ではないと書いていますね。
(1) 楽器を「声」として使う
「音楽は、ただ音を並べることではなく、自分の内側から歌うことだ。」
「奏者の『声』が、楽器の音色にそのまま反映される。」
– セルジオ・カロリーノ
チューバの演奏ではただの指使いや息の操作ではなく、人間の声に近いものとして捉えるうまくいきます。
誰もがすぐに取り入れられることとしては
演奏前に歌ってみること
がおすすめです
(2) 楽器で譜読みをしない。
「楽器を吹く前に、まず歌ってみよう。そうすれば、楽器でも自然に表現できる。」
– セルジオ・カロリーノ
大体の人は、初めて楽譜を渡されたときに楽器で吹いて譜読みをしていませんか?
まずはこの習慣をやめて、ピアノ(アプリでもキーボードでも)を使って、音程を確認しながら歌って譜読みをしてみましょう。
これは、音楽を「頭で考える」のではなく、「身体で感じる」第一歩となります。
譜読みをしながら楽譜を読み間違えると「できないクセが脳内に刻まれます」
楽器で音を出すことには
どんなリズムで
どんなテンポで
どんなスタイルで
どんな音程で
どんなハーモニー
なのかを丁寧に確認しておくと格段に上達のスピードが上がります。
バズィング(Buzzing)
マウスピースバズィングは、本当に効果的か?それとも、それほど重要ではないのか?
このテーマについては、長年にわたり多くの議論がなされてきました。バズィングを重視する人もいれば、それほど重要視しない人もいます。
私自身の経験から言うと、バズィングを行うこと自体は、それほど重要ではないと考えています。 なぜなら、マウスピースだけで音を鳴らすことと、楽器を通して音を出すことは、全く異なるプロセスだからです。
しかし、私は極端な意見を持つタイプではないので、バズィングを取り入れることでメリットを感じる人がいることも理解しています。それが自信や安心感につながるなら、それはそれで価値があると思います。
バズィングの適切な活用法
- バズィングをする際は、できる限りリラックスして行うことが重要
- 実際の演奏と同じように、最も美しい音を出すことを意識する
- 無理に長時間行うのではなく、短時間で効率的に取り入れる
- バズィングを、ウォームアップやアンブシュアの調整手段として活用する
バズィングと演奏の関係
私たちが金管楽器を演奏する際、まず最初にマウスピースを唇に当てることになります。その瞬間、多くの人は違和感を覚えます。なぜなら、金属の塊を顔に押し付けるという行為自体が、もともと人間の自然な行動ではないからです。
そのため、マウスピースと唇の接触に慣れるために、軽くバズィングを行うこと自体は、自然な行為かもしれません。バズィングが完全に不要だというわけではなく、適切に使えば、演奏に役立つ場合もあります。
「他人がどう思おうと気にせず、自分のやり方で音楽を奏でよう。我々は、自分自身の最高の教師なのだから。」
– セルジオ・カロリーノ(リスボンからミラノへの移動中、2019年4月14日)
(1) バズイングの有効性を疑う姿勢
セルジオは、バズイングを過大評価する風潮に対して懐疑的な立場ですね。いちばん大事なのは本質からズレてしまって
バズイングしたらだれでもうまくなる
と妄信的に信じられているところです。
彼は、「バズイングと実際の楽器演奏はまったく異なるものである」 と考えており、取りれ方を間違うとバズイングが効果的な練習方法にはならないことを指摘しています。
「バズイングは、チューバの管を通した音とはまったく違うものだ。」
「唇だけで音を作るのではなく、楽器全体を響かせることが重要だ。」
– セルジオ・カロリーノ
つまり、セルジオにとって、バズイング=唇だけで機械的に肉体的に音を作ることにこだわるのは本質からズレていて、息と音楽と体と全てが一体になって音になる連携をとても重視していることがわかります。
(2) それでもバズイングを取り入れる理由
とはいえ、彼はバズイングを完全に否定しているわけではありません。
マウスピースのバズイングとフリーバズイング含めてめちゃめちゃできます。
バズイングには「唇と息の調整を行い、演奏感覚を整える」という役割があり、特に朝一番のウォームアップや、楽器を吹く前の調整として活用することは有効です。
「バズイングは、楽器を持たないときに音楽と向き合う手段の一つになり得る。」
「ただし、それに頼りすぎるのではなく、楽器を通しての音作りを常に意識するべきだ。」
– セルジオ・カロリーノ
彼の意見としては、
バズイングを単なる「唇の筋肉の練習」として使うのではなく、より音楽的なアプローチの一部として活用するべき というものです。
4. 実践的な練習方法
皆さんお待ちかねの実践的なコーナーです
ここからは著者の西部の経験や考え方も加えて、より実践的なアドバイスを書いていきます。
今日から演奏に取り入れることができると思うので、まずは試してみてください。
- 演奏する前に歌ってみる
- 楽譜を見たら、まず声に出して歌ってみる
- ピアノなどを使って可能な限り正確な音程で歌う
- どんな音楽にしたいのか軽く考えてみる
- 同じ内容でバズイングする
- 低音から高音まで均一な息の流れを意識する
- 歌っているつもりで正確な音程でバズイングする(機械的にやらない・筋トレではない)
- 息の流れを意識し、音と音の間をグリッサンドでスムーズにつなげる
- 演奏中も歌っている気持ちで吹く
- 楽器を通じて「声」を表現する
- 音楽の流れを大切にし、メロディの歌心を意識する
- このとき、唇や舌や肺などの難しいことは考えない
「楽器を吹いているのではなく、歌っているつもりで演奏しよう。」
「バズイングをするなら、常に音楽的な意図を持ってやることが大事だ。」
– セルジオ・カロリーノ
5. まとめ
セルジオ本人はバズイングはあんまりやらない人でしたが、根本的な考えとしてはバズイングのさらに先にある「歌うこと」を最も大事にしています。
歌ったように自然に楽器が吹けるのであれば、バズイングをやらなくても正確な音程を唇で再現できるし、一部の天才的なプレイヤーは持ち合わせているセンスでこの工程をすぐに習得できちゃうのでしょう。
バズイングをすることそのものが大事なのではなく、何の目的でやるかが非常に大事で
教本や楽譜を買って独学で一人で練習していても、本質を理解していないと正しい効果が出ないのだと思います。
セルジオのバズイングと歌に関するコンセプトをまとめると…
- バズイングは演奏の本質ではなく、補助的な役割を果たすもの
- バズイングよりも、歌うことの方が音楽的な表現にとって重要
- 楽器は「声」の延長であり、ただ吹くのではなく、歌うように演奏することが大切
- 演奏前に歌うことで、音楽的な意識を高め、より自然な表現が可能になる
「音楽とは、歌うことに他ならない!」
– セルジオ・カロリーノ
今回は初歩的な内容でしたが、前回の記事のMind vs Metalのコンセプトに沿えば、5オクターブの跳躍もテクニカルなスケールも自分が簡単だと思ったらそれはフロー状態ではないのです。常に自分の限界を超えていく姿勢こそが圧倒的なパフォーマンスを生む分けて、そこにはコツとかないんですよね。
コツコツ続けることが大事なので、自分に厳しく挑戦し続けなければならないです。
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