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マウスピース沼レベル2へようこそ。チューバサダーズの西部です。見た目が良い、音が好きという理由で、散々金メッキやピンクゴールドメッキなど試してきました。やらなければ良かったなという場合とやって良かった場合もありますので、今回はチューバ吹きとして、管楽器調律師として知る限りの情報をまとめてみました。
高音楽器であればまた少し変わってくると思いますし、色々なパターンが想定されますので本記事はあくまでチューバ吹きの一つの考え方として御覧ください。
メッキで音は変わりますが、本質は変わりません。つまり、変化するのは事実ですが、その変化というのは大概が自分だけのこだわりの領域であるということです。もっと鳴らしたいとか響きを増やしたいとか柔らかい音色にしたいとか、根本的にできてないことをメッキかけることで逃げても解決しません。とはいえ楽器の上達はそう言った微細な変化の積み重ねや自分のこだわりがかなり大切なので、自分の理想とする音へどれだけこだわって追求できるかという点において、無視できない部分でもあります。メッキなんて変わらないから練習しろという意見もありますが、マウスピースや楽器でいい組み合わせが見つかれば練習の効率も上がりますので、何事もバランスなのでは無いかと思います。
元々金メッキのマウスピースとシルバーメッキのマウスピースに後がけのメッキをした場合について説明していきます。元々の金メッキの場合は多くの場合下地に薄い銀メッキかニッケルメッキを施し、金メッキを重ねます。合計でおよそ6ミクロン(メーカーによって誤差あり)ほどの厚みになります。既製品のシルバーメッキにさらに金メッキをかけると元々金メッキの製品よりもトータルで分厚くなります。これは後がけのメッキ全てに共通する特徴で、メッキが厚くなることで反応が鈍くなり音が抜けにくくなることがあります。元々メッキ品は仕上がった状態で試奏して確認して購入できますが、後がけは音の変化がやってみないとわからないため、好みや思ったような変化が出なかった場合は結構ショックです。これが後がけメッキのデメリットですね。※全部が全部そうではないので、そういうパターンもありますよという意味でお考えください。
ちなみに元の銀メッキを剥離してからメッキをかけるのはかなりの手間がかかるため、再メッキの際に剥離してからかけているところは少ない印象です。
•管楽器調律の技術により金メッキやプラチナの重たい、硬いと言ったデメリットを解消可能な為、純粋なメッキの差で比較することが可能になった。
•真鍮無垢<銀メッキ<金メッキ<プラチナメッキ<ロジウムの順番に音の響きや圧が増え、雑味の無いピュアな音、遠鳴り系になる。反面、発音時の質感や反応の素直さが薄まっていく。
•大体の場合シンプルに銀メッキが良い音する(諸説あり笑)
マウスピースを購入するとまずこの銀メッキの仕上げが多いです。メッキ代が1番安いです。比重が真鍮とほとんど変わらないため、吹奏感は軽めです。唇が適度に固定される感覚があり、ソリッドで程よくまとまった音が出せます。銀メッキ下地には銅メッキかニッケルメッキを1μほど使うことが多いです。ニッケルのほうが少し無骨さが増しますが、それがいい味を出すんですよね。ペラントゥッチなどの丸みを帯びたリムは銀メッキの方が吹きやすく感じますね。ボボソロやヴォラーレなどのフラット系のリムで、ソロに使う場合は銀よりも金メッキの方が設計の通りの音が出ると思います。
金メッキは銀メッキに次いで普及している表面処理方法で、響きの密度・純度が増す印象です。柔らかい音とか暗い音って言われたりしますが、非常に曖昧な表現ですよね。柔らかい音ってそもそもあんまりいい印象がありません。ふにゃふにゃしててモサッとしているわけではなく、響きの密度が上がり、倍音のハイ成分がきめ細かくなる印象です。音の硬さはプレイヤーのコントロールの問題な気がします。確かに金メッキを鳴らしきれないとモヤッとしますし、音のモニター感覚は銀メッキに比べるとやや優しめです。
金メッキといっても工場によって様々で、下地に何の金属を使うか、又は直接真鍮にメッキをするのかでも音が変わります。下地が1μ銅→1μ銀メッキのもので、その上から3μ金のメッキが国内では一般的です。下地にニッケルを使うと無骨な要素が少し加わるため、それが音の味になってきますが、ニッケル下地はアレルギーが出やすいです。真鍮地金に直接金メッキという方法もありますが、鳴り切らない感じがあり、あまりおすすめではありません。
また、簡易メッキのような剥がれやすいものもあるのでアクセサリー用の薄いメッキは楽器には向いていません。ちなみに比重とは物の密度を水の密度で割った値なのですが、金は真鍮の2倍以上あり、口当たりは滑らかに感じます。金メッキは自由度が上がる印象があります。本当に誤差なので、目隠しされたら分かりません。リムだけ金メッキも組み合わせる楽器や状況によっては良いと思いますが、すごく個人的にはあんまり印象は良くないです。
銀メッキマウスピースにリムだけメッキをかけることで、二色が美しいリム金マウスピースが出来上がります。銀メッキの良さを残しつつ口当たりはなめらかというメリットがある反面、金と銀の振動伝達の差からマウスピースの中に響きのぶつかり合いが生まれることが稀にあり、何件か見てきています。メッキ後に気に入ってすごく吹きやすいという場合はもちろんそのままで良いのですが、少し気をつけておきたいです。
リムだけが金になることで個人的なイメージとしては本体まで鳴りきってくれない感覚があります。これがリムプラチナ本体ゴールドとかだとうまくいくこともあるので、マウスピースの重量バランスや設計とメッキの組み合わせ次第といったところです。
ちなみに個人的にはリムインナープラチナがパワー発音遠なりなど様々な性能からしてイチオシです。
これも中々面白いメッキですね。ピンクゴールドというものは指輪やネックレスなどのアクセサリーではお馴染みで、金に銅を混ぜた合金です。銅が入っているからか、ピンクだからか柔らかい音とか温かみのある音とか言われてますが、全くそんな感じはしません。というか目隠しして聞いてもらって、暖かい音だなぁとか言われたらソロでそれしか音色が出ないことになるので使いにくいです。素材そのものを真鍮ではなく銅で作ったらそれぐらいの変化はあると思いますが…。話を戻すとピンクゴールドは実は硬い合金で、物によっては硬度はプラチナを超えることがあります。その傾向から振動を楽器に伝えるパワーがあるため、息を吹き込んだ時のキャパシティと遠鳴り傾向が銀メッキより強くなります。音色云々は人によると思います。
先程の硬さの話でいうと、硬い金属だからといって音が硬いと紐づけるのは短絡的で、硬い金属が表面に乗ることで何が起きるかというところがポイントかと思います。グリーンゴールドは18Kの中では柔らかい部類ですが、それでも銀よりもプラチナよりも硬いですね。銀の成分が入っているため、銀メッキの楽器には相性が良さそうです。
1番高価なメッキです。チューバだとメッキ処理に2-3万かかります。マウスピースが2本買えてしまいます…。ですが、メッキの中では最も音の変化がわかりやすく、遠鳴りする傾向にあります。
ただ、プラチナはかけたままだと音が固すぎ、吹奏感重たすぎて現実的ではないので、メッキ後に調整が必要だと私は思います。サックスでも金管でも数多くのプラチナメッキ品を管楽器調律師として見てきましたが、プラチナは1番バケます。調律をした場合ですが、密度・パワー・遠鳴り・表現の出しやすさが段違いです。ホールで聴き比べるとプラチナメッキだけ音の壁が飛んできているみたいに空間が鳴ります。(それが絶対的にいい事かどうかはおいておいて…)銀メッキは低音域がやや薄く、中高音域から飛んでくる印象で、金メッキは全音域均一なもののプラチナには劣るという遠鳴り傾向です。モニター感覚はメッキの中では1番遠くなり、あれ全然鳴ってないんじゃみたいな感覚になります。音の芯は最も強く出ます。調律で使い物になるところまで軽くできたとしても比較すると銀メッキよりは重いので、コントロールはやや難しいです。ただ、嫌な重さではなくなるので、プラチナメッキのマウスピース単体を聴いて、重すぎるという印象はありません。リムインナープラチナ本体銀メッキという仕上げがすごく使いやすいです。
沼にハマるとメッキ代が大変なので、勇気のある方はお試しください。パラジウム、ロジウムなど白金系のメッキが他にもありますが、自分は試したことがないですね。どなたか情報お待ちしております。
チューバではあまり見かけないのですが、ホルンやトランペットだとたまにありますね。音が素直で、ニュアンスやディティールがストレートに楽器から出てくる印象です。真鍮剥き出しなので、使っていると金属がだんだん削れてきます…。真鍮地金も遠鳴り傾向があり、プラチナとは違う素直でシンプルな音がポーンと飛ぶ印象ですね。好んでこの仕上げのマウスピースを使っているプレイヤーも居るぐらいで、僕も好きな音です。ただ、メンテナンスが大変なのと金属アレルギーが怖いですね。
日本国内には本当に優秀な職人さんが数多くいらっしゃいます。全部は紹介しきれませんが、自分が知っている工房を紹介します。
ブラスラボモモ(Brass Lab. MOMO)加工、改造、カスタムオーダー。独自の音響処理が強い。プレイヤーのオーダーはほぼなんでもやってくれます。
ウィリーズ(Willie’s) カスタムオーダー、トロンボーン奏者中心にユーザーが多い。マシンメイドによる精密な削り出し。
アイルリッヒ(IsleRiche) 加工、改造、カスタムオーダー。