マウロ・マルティンスの基礎グループレッスンを終えて

どうもこんにちは、西部です。

10月10日に開催した「BASSAZAP for ユーフォニアム」では、マウロ・マルティンス(Mauro Martins)を講師に迎えてグループレッスンを行いました。マウロとはポルトガル留学時代の同級生で、それ以来の付き合いなのですが、彼のレッスンを見るのは僕も今回が初めてだったので、彼が講師をやっていてとても新鮮な風景でした。

参加してくださった何人かの方とお話ししていたら、チューバサダーズのメンバーがマウロのレッスンをどう見ていたのか、そういう感想や分析を聞くのも勉強になると言っていただいたので、今回は僕なりに感じたことを書いてみようと思います。

目次
ユーフォニアムを持つ受講生が並び、前方で講師が説明する講習会の様子。
総勢30名の受講生の皆さんと一緒に進めたグループレッスン。

発音へのこだわりに感じた、セルジオイズム

まず率直な感想として、マウロは本当にレッスンが上手でしたねー。お手本の演奏が素晴らしいのはもちろんなんですが、受講生の音が変わったところ、また元に戻ってしまったところをよく聴いていて、その都度きちんと指摘するんですよね。

そしてレッスン全体を通して感じたのは、めちゃめちゃセルジオイズムが入っているなということです。本人に「やっぱりセルジオに影響されてるね」なんて言ったら絶対に嫌がると思いますが(翻訳してこの記事を読まないことを願う笑)、僕がセルジオ・カロリーノから習った考え方や音のコンセプトと重なるところが、結構ありました。

特に発音に関しては、ものすごくこだわっていましたね。息の勢いや力だけに頼らず、出だしの音そのものを美しく、丁寧につくる。この発音のクオリティに対するこだわりは、まさにセルジオの教えだなと思いました。

一度うまくいったところも、しばらく吹いているうちに元に戻ってしまうことってありますよね。そこをマウロはよく聴いていて、その都度丁寧に声をかけていたので、結構丁寧に確認するんだなと印象に残りました。

僕らだと「確かに難しいですよね…できる限りやってみましょう」という感じで進行してしまうのですが、彼は厳しく直させていて、実際の練習でのこうやって細部に拘り続ける姿勢があるかないかで結果が大きく違うだろうなって思います。

「いい音」はひとつじゃない

もうひとつ印象に残ったのが、マウロが参加者の皆さんに投げかけていた、こんな質問です。

あなたにとって良い音とは何ですか?

レッスンにて

参加者の方は「柔らかい音」、「遠くに飛ぶ音」、「響きの多い音」…といろいろ答えていたのですが、マウロが最後に話していたのは、良い音はひとつじゃないということでした。曲によってもコンサートによっても必要な音は変わるので、いつでもこの音を出していれば正解、というものではないんですね。

例えば、柔らかい音を目指して練習していても、音楽によっては鋭さや輪郭のはっきりした音が必要になることもありますよね。柔らかい音ももちろん大事ですが、それだけに決めずに、その曲や場面に合った音を選べるようにしておきたい。そう考えると、自分の中にいろいろな音のイメージを持っておくことが大事なんだと思います。

だから、いい音の出し方はこれだと決めてしまう前に、まず自分は今どんな音を出したいのか、その音楽では何が必要なのかを考える。こういうところから入っていくのは、すごく良いレッスンだなと思いました。哲学的な話から始まるところも、セルジオにめっちゃ似てますね。

黒板の前で、両手を使って身振りを交えながら説明する講師。
髪の分け目にはこだわりがあるようで、写真写りをいつも気にしています

ハイトーンのコツ

マウロというと、やっぱりあのハイトーンが気になる方も多いと思います。どうやったらあんな高い音が出るのか、何か特別なことをしているんじゃないかと思ってしまいますよね。

実際、レッスンで大切にしていたのは、唇に強くプレッシャーをかけるよりも、楽に鳴らせるやり方を探していくことでした。高い音が当たったかどうかだけでなく、無理なく響かせられているかまで確かめながら練習する、ということですね。「無理やり出す練習を何時間やっても、楽に出す練習はしてないんだから、楽に出るようにはならない」こんな感じのことを喋っていました。

そのための練習として、バズィングやフラッター、フリーバズなどを紹介していました。もうチューバサダーズのチャンネルと同じほぼ同じことですね。

ボルドーニなどのメロディーを使って、低音域や高音域を練習するようにも話していました。これは実際良い練習方法で、最終的には曲の中で使いたい音ですから、音をひとつずつ出すだけでなく、メロディーの中で練習するというのもよく分かります。

Warm and fast(温かくて速い息)

具体的なコツとして繰り返していたこの言葉も、面白かったですね。「温かい息」という言い方はよく聞きますが、そこに「速い」が加わるところが、印象的でした。温かさと速さの両方を意識することが、結構ポイントになるんじゃないかなと思います。息を遅くなんて指導法もあったりして混乱すると思いますが、「温かく」と「速く」を両立させると自然といい感じの息遣いになります。これはめっちゃナイスな表現でしたねー。

僕としては、口をどれくらい開けるかといった方法そのものよりも、結果としてどんな音を出しているかの方がずっと大事だと思っています。先に口の形を決めてしまうより、出したい音をイメージしながら、どうすればその音に近づけるかを試していくのが大事だと思います。

フリーバズもリップスラーも、音のクオリティ

マウロが色々と練習方法を紹介していた中で、特に印象的だったのがフリーバズでした。受講生の皆さんが苦戦する場面もありましたが、マウロはこれも見事に上手にできるんですよね〜。フリーバズにはいろいろな考え方がありますが、あの音と演奏を目の前にすると、普段あまりやっていない方も、まず取り組んでみる価値はあるんじゃないかなと思いました。

練習の内容は、フリーバズでロングトーンをするというシンプルなものですが、音が出せたところで終わらず、その響きや安定感をよく聴いて、イメージしている音に近づけていく。

リップスラーでも同じで、途中の音が急に強く鳴らないように、滑らかにつなげることを何度も何度も注意して、大事にさせていました。言われてみれば当たり前なんですが、その当たり前を実際の音にできているかとなると、意外と難しいところだと思います。練習メニューをこなすだけでなく、自分が今どんな音を出しているのかを聴いて、細かいところまでこだわれるか。ここがとても大事なんだと感じました。

低音域はダウンシフト

低音域に関しては、シフトを使った音の出し方も取り上げていました。チューバサダーズの動画でもシフトの話はおなじみですね。ユーフォニアムでもこれができるようになると、低音域の吹きやすさや表現の幅はかなり変わると思います。

僕が聴いてきた中では、ユーフォの方で低音域が少しこもってしまうとか、音程が上ずってしまう、フォルテで吹けない原因は、シフトが関係しているんじゃないかなと思います。シフトが使えるようになると、低音域の表現にも、もっと選択肢が増えるんじゃないかと思います。シフトの実演がうますぎて、会場がただただマウロの圧倒的な低音を聴いて「うめぇ〜」→マウロ「こうだ」バァァィーンみたいな時間が流れてました。

チューバサダーズの動画を見て皆さんもチャレンジしてみてください。

自分の出す音にどこまでこだわりを持てるか

ユーフォニアムを手に持ち、片手を広げて説明する講師。
通訳の相円は疲労困憊でした。大役お疲れ様

ここまでいろいろ書きましたが、こうした説明をしながらマウロが目の前で吹いてくれるお手本が、やっぱり圧倒的なんですよね。参加された皆さんは、あの音を間近で聴けただけでも、ものすごく良い機会になったんじゃないかと思います。

もちろん、一流の奏者からコンセプトを説明してもらって、その場ですぐ同じようにできるなら、みんな苦労しないですが、すぐにはできなくても「これは実際にできることなんだ」と目の前で聴くと、じゃあ自分もその音を目指してみようと思える。文章で読むのとは、説得力が全然違います。

僕がセルジオのレッスンを受けていたときも、はっきりした音楽のコンセプトと、それをそのまま形にしてしまう技術を目の前で見せられると、もうぐうの音も出ないんですよ笑。マウロのレッスンにもそういう説得力がありましたし、だからこそ、受け取ったものを自分の練習にどうつなげるかが大事なんだと思います。

教えてもらった音や考え方を手がかりに、自分でも試しながら、出したい音が自然に出てくるところまで取り組んでいく。そういう時間を重ねることで、曲の中でも自由に使える音になっていくんだと思います。

それから、僕としてはちょっと嬉しかったこともあって、マウロが言っていた根本的な部分は、僕たちチューバサダーズが普段からお伝えしていることと、何も変わらないんですよね。世界的なソリストも、本当にシンプルで基礎的なことに、細かいところまでこだわって取り組んでいる。その積み重ねが、あの演奏につながっているんだと感じました。

これを書きながら改めて奏法や練習のアイデアをまとめることができ、自分のチューバの演奏も少しバージョンアップできた気がします。

気をつけていても段々と考え方や練習って凝り固まってしまうので、常にコンセプトを忘れずにいたいですね。次回の来日は何年後になるかわかりませんが、きっとまたコンサートをやると思いますので、楽しみにお待ちください。

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