【チューバ】バズィングは本当にした方がいいのか?【バズイング】

バズィングしてますかっ!?

マウスピースのみで音を出す練習、バズィング(バズイング、Buzzing)

部活で金管楽器を始めた時に先輩から「バズィングやっとけ」と言われたことのある人、
多分限りなく100パーセントなんじゃないかと思います。
が、実際のところかなりやっている人もいれば、全くやっていない人も。
同じ楽器のプレイヤーなのに実に色んな人がいますよね。

ここでは、これまでの楽器人生でメチャクチャやったり、やらなかったりした僕が
自分の経験に基づいた個人的な見解を述べたいと思います。

はじめに

まずこの記事を読みに来たということはそれだけ気になっていることだと思いますので、結論を言ってしまいます。

バズィングをする意味は、あります。

するかしないかで言えば、した方がいいです。

しかし、ではどういう意味があるのか、どういう練習の仕方をするべきか、
というのが次に大事なことになるのですが
まぁ~~ここでまた色んなこと言っている人がいますよね?

そういった世間一般の風潮といいますか、僕が今まで見聞きしてきたものとして

唇の周りの筋肉を鍛える、体力をつける。
良いアンブシュアを作る。
良い音色を得る。
毎日楽器に触る前にしっかり練習する。
バズィングで吹けないことは楽器で吹けない。

といったものがありますが
僕は上記のものには全て同意しませ
部分的にはそうとも言える、というものもありますが、インフォメーションとして正確ではないと思っています

つまり、バズィングの練習自体には肯定的な立場を取るのですが、練習の目的や役割の点で少し言いたいことがあるというわけです。
それではここから細かく何故そう思うのか、を語っていきたいと思います。

※この記事はあくまでバズィングすることの是非や、するに当たっての思想についての記事ですので、
「具体的にこう練習する」という情報をお求めの方のご希望には沿えないかもしれません、ごめんなさい。
もし詳しいことを知りたければメンバーの各SNSまでお気軽にご質問下さい。

息と身体のコーディネーション

見出しでカッコつけた感じで言ってしまいましたが、もう少し砕けた言い方をすると
楽器を吹くための、息と身体の複雑な絡み合いをコントロールする能力を鍛える、或いはその感覚そのものを得ること
僕の考えるバズィングの最大の目的です。というか管楽器の基礎練習の目的って大体これが本質だと思います。

「金管楽器で音を出す」というのは
ほどよく唇に隙間を空け・ほどよく腹圧をかけ・ほどよいスピードの息を流し続ける…という
言葉でハッキリ「ここ!」と言うことの出来ない絶妙なバランスの上で成り立った複雑な行為であるわけで

(ここをもっと詳しく書いている教本を最近読んだな~?)

この言葉にしがたい感覚を養い鍛えることがそもそも最も重要な金管楽器の基礎練習であり
バズィングはその練習法の中の1つである
と、僕は考えています。

バズィングは難しい” エクササイズ “

こちらは何も特別でないごく一般的なウォーミングアップの譜例ですが、
これを1ブレスで・一定の音色で・しかも正しい音程で、とにかく「出来る限り完璧に吹く」という非常に高い志のもと
①マウスピース②楽器の両方でやってみてください。
出来たらこのパターンとテンポで半音ずつ上げていき、ちょうど1オクターヴ正確に上がったら終わり、としましょうか。

正直、マウスピースでやる方が難しいですよね?僕はそれが普通だと思います。
僕も先生に同じことやれって言われたら多分緊張で震えます。

指を押せばある程度音の変わる楽器と違って完全に自分次第。嘘がつけない。
楽器ほどの抵抗がないから息もお腹でしっかりコントロールしないとうまく保てない。
バズィングの方が難しいんです。これを大前提にするかどうかだけでも大分違うんじゃないでしょうか。

つまり、「バズィングで出来るようになれば楽器が簡単になる」という点に練習の価値があるのであって
これが「楽器でやる前にまずバズィングが出来るようになってから」ってなっちゃうと微妙に順序が逆になるわけですね。

難しいことを出来るようにするための作業はエクササイズ或いはトレーニングというものであり、
その日の練習のスタートを整えるウォーミングアップとはハッキリと違うものだと僕は考えています。

練習の始まり。
まだ唇も呼吸のスイッチも眠っているところでいきなりシビアなバズィングから始める。
なんだか音もカスカスで上手くいかない。
でもこれが出来なきゃ楽器に向かえない。
どうにか音にしようと力む。
そうこうしていくうちにどんどんアンブシュアも楽器を吹く時の形からかけ離れ、
気が付けば早くも消耗している…

バズィングをやったせいでおかしくなる人がいるとしたらこういうのが不調の入り口なんじゃないでしょうか。

そういう意味で僕も、上に書いたようなバズィングのエクササイズを練習する必要性は感じても
ウォーミングアップとして“扱うのは不適切だと考えます。
普通に大好きな楽器に触って、気持ち良く調子を上げて、
気力が充実してきたところで「さぁやるぞ!」と課題に挑む方が良くないですか?
特に極端に高い音や低い音はどうしたって楽器と同じ形では吹けませんからね。
楽器で良い音楽を奏でるのが最終目標なのに、自分自身をバズィング専用機に改造するなんて本末転倒です。
ここにバズィング反対派を公言する人の主張が集約されている気がします。

長い休暇、または多忙な日々が明けて久しぶりに練習するぞ!って時に心機一転のつもりでまず最初にバズィングから分析…と言うのも僕はおススメしません。
身体は鳴らしづらい状況になっているわけですから、そこで音の出し方の深部に触れるような作業は危険だとすら思います。
そういう時こそむしろ過去の吹き方や先入観をリセットして楽器にゴォゴォ息を吹き込み
「気持ちよく呼吸して気持ちよく鳴らす」感覚を追求してみましょう。
ストイックなエクササイズはその後からで遅くないですよ。

実体験として、楽器で上手く出来ないパッセージをバズィングで練習して出来るようになったことは沢山あります。
ただそれは単に「ゆっくり丁寧に練習したから音の一つ一つが頭に入った」というだけのことだと思います。
成果が出たんだからそれで良いのですけど、これによって「まずバズィングやらなきゃ吹けない」みたいなシステムになってしまうのは危険なことだと思います。ピアノと歌で練習したって同じ効果あると思いますよ?

でも現にその日の最初からしっかりバズィング出来て、それをもって効果的にウォームアップ出来ている人もいますよね?
その人はそれだけフォームが出来ている人なのです。次に続きます。

やる人と、やらない人

プロでも、それも世界クラスの奏者でも「バズィングなんて全然やらないよ。なんなら嫌いだよ~」って人は実際にいます。
一方で

バズィングもやらない奴に教えることなんかないぞっ!バズィングしろバズィング!バズィングをオカズにバズィング!!
みたいな方も勿論います。

誓って正直に言いますが、どちらも素晴らしい奏者です。僕ごときには優劣なんて付けられません。

ただしかし!
僕が見てきた限り「楽器は上手いけどバズィングは全く出来ない人」というのはちょっと見当たりません。

「バズィング嫌いの名手」とされる人、ただ嫌いなだけで、やればちゃんと出来ます。

結局、バズィングが上手く出来る状態というのを改めて言うと
・しっかりお腹を使って息をコントロール出来て
・スムーズに効率よく唇を震わせることが出来て
・しかも音程が良い
という条件が揃っているわけで、これってもう純に楽器が上手い人のそれですよね。

こういう、「どういう仕組みで吹くか」っていうメカニカルな演奏神経とでも言うべきものを、
もうよくわからないうちに体得してしまっている人、つまりフォームの出来ている人というのは悔しいことにいるわけです。
勿論これはトレーニングですから、
毎日バズィングやっている人と全然やっていない人が同時にバズィングのエクササイズやったら
絶対前者の方が上手いと思いますよ!
でも、多分後者でもちょっと何日か特訓すれば簡単に追いつけちゃう、そんな人もいるのです。

それは楽器で出来ていたことをバズィングにスイッチするのに少しコツが要ったというだけのことで
もう、そういう人はそういう人、ということで良いと思うんですよね(ここまで語って結局それ!)

ただしかし!(二度目)
自分に正直にならなくてはいけませんよ?
本当にあなたはそのぐらい「吹き方」、わかっちゃってるんですか?

僕も、まるで”バズィングをせず上手くなる人の方が才能ある”みたいな書き方をしてしまいましたが
ナニ、そんなに悲観することはない。
人の才なんて一長一短ですから、あなたと彼は得意・不得意が違うというだけなのです。
下書きが絶対にいる漫画家と全然いらない漫画家がいても、作品の良し悪しには全く関係ないのです。
もう一度言いますが

バズィング全っ然出来ないのに楽器では上手いなんて人、あんまりいません
出来ないものは練習しなくてはいけません。
もしこの記事を読んでバズィングをサボる口実にするのだとしたら心外です。

しかしながら、やるにしても「いつかこの練習から卒業してやる」という気概は必要だと思いますね。
ここで言えば、楽器を吹くための自分自身のハッキリとしたフォームを掴む!という目的意識ですね。

鼻歌まじりに出来るようになったらワザワザ毎日やることありません。
(本当に鼻歌と同時にバズィングするのを目指さないで下さいね。特殊奏法になってしまいます。)
やらなくなればまた少し下手になるでしょうが、そしたらまた出来るようになるまでやればいいのです。
次は最初ほど時間かからないでしょう。それが「身についてる」ってものです。

練習には目的意識が大事ですが、それはつまり一定のゴールがあって良いということだと思います。
もう出来るとわかっている=もうゴールしているもの、を毎日毎日決まりきったように練習して、
まだ出来ないものを練習するエネルギーと時間を失っている人は多いです。僕とか

これは僕も自分に言い聞かせたいことなんです。練習は本当に頭を使いましょう。
賢くやっている結果「一見怠けている風」に見えることを怖れてはいけません。
自分がどっちなのかは、本当に自分に向き合えば分かるはずです。

楽器から離れられるという長所

自分のフォーム作りという点では色んな練習法があるので、バズィングはその一つの選択肢に過ぎない
ということをここまでで書きましたが、
ひとつ僕がこの練習の大きな長所だな、と思うことが楽器を持たずに出来るということです。

チューバというのは非常に縦に大きく曲げたり出来ない固い楽器で、しかも座って吹くということはまず変えられません。
必然、自分の顔に対するマウスピースの触れる角度というのが他の楽器と比べて不自由になりがちです。

あなたの憧れの色んな金管楽器奏者の演奏を
動画再生数に貢献するつもりで片っ端からチェックして頂けばお分かりでしょうが、
マウスピースにどういう角度で触れるべきか、というのは完全に人それぞれです。

ある人の音が大好きだからって「その人と同じ角度で吹こう!」なんて思ってはいけません。
ここも決して良し悪しでなく、顔の形が違うのですから違って当然なのです。
(憧れの「音」のイメージを常に強く持って演奏すれば、
見た目は違ってもきっと傾向の似た演奏は出来るようになる筈ですよ。)

特に初心者の方はチューバという楽器の大きさについ圧倒されて
合理的でない持ち方で、自分から楽器に口を寄せに行くような形になってしまい、
望ましい角度や位置で吹けていない恐れがあります。

そういう時、楽器を置き、なんなら立ち上がってしっかりと背筋を伸ばし、大きく息を吸ってそのままスゥーッと
ささやかに口を閉じつつマウスピースに息を吹き込んでみましょう。

それで勝手に「ヴヴヴ…」と唇が震えてしまう、そこがあなたにとって自然な角度や位置である可能性は高いです。
そうしたら次はそこに楽器を合わせられる姿勢を考えてみましょう。

前に言ったこととは少し矛盾するようですが、そうやって「バズィングでの感覚に楽器の方を持っていく」というやり方で楽器の持ち方や姿勢の物理的な面でも自身のフォームを固める、という役立て方は大変有用だと思います。

ウォーミングアップになるケース

またしても先に言ったことと矛盾してしまいますが(得てしてこういうものです。笑)
こうして自分が吹く時の息のスピード感や口の感覚というものがハッキリとしたイメージになり
要するにバズィング自体がそう難しくないなと思えるようになったら、
今度は逆にそれをウォーミングアップとして用いるのは大賛成です

難しくない内容で良いと思います。時間もそうかけないで良いでしょう。
短めの好きなフレーズを(「ハッピーバスデートゥーユー」とか真面目に結構アリだと思いますよ)
高すぎず低すぎずの音域で、身体を使って大きく息を動かし、
しかし唇には優しいプレッシャーで、歌を歌うように吹いてみる。
それを何度か繰り返して自分の「いつも」の感じが出てきたら楽器にGO!って感じでどうでしょう?
さぁ練習張り切っていきましょう。

まとめ

最後に今回のタイトルに対する回答をまとめると

バズィングは息と体を連動させた演奏フォームを作る練習法の一つ。した方がいいことはある。

ただ、絶対に誰もが練習しなくちゃいけないものではない。

でも全然出来ない人は、やっぱり出来るようにしておいた方が良い。

あくまで本題は楽器で音楽を演奏すること、というのを忘れない。

という風になりますね。(まとめてみればこれだけだった!)

やるに当たって何度でも言いたいのが、ただ唇の摩擦をもって「音が出たか、出なかったか」というところでなく、
しっかり息をコントロールする一連の全身動作を意識出来たか、というところを重視して欲しいということです。

「フォームが良い」ということは必然音色も良くなりますし、
疲れづらく、または多少疲れても吹き続けられるようになるわけですから
実のところ最初に否定した一般的な風潮も決して誤りではないです。

ただ、バズィングそのものが練習の主役になり、筋トレ的に「やればやるほど強くなる」とか、
むちゃんこキツイことを自分に課すのが目的になってしまうと結果が歪んでしまうので是非気を付けて欲しいと思います。

まだブログが開設して間もない記事ですので、これからも度々追記や編集があるかもしれません。
というか恐らくあなたが読んでいるこの間にもチクチクチクチク弄ってます。笑
もし疑問に思う事があればどうぞお気軽に、筆者のSNSまでご質問下さい。

僕もこんなに語ったからには人に見せられるようにバズィング、練習します。

お読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

チューバサダーズのチューバ担当
フリーチューバ奏者・音楽講師
武蔵野音楽大学卒業、チューリッヒ芸術院(スイス)修了
7年のスイス留学を経て埼玉、東京近郊でフリーランス活動をしています。

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